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Tokyo, 10月 10, 2021
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Selections Q3, 2021

Select 2021 Q3 1920 1080

今年からスタートした、MUTEK.JPのメンバーがインスピレーションを受けた音楽やデジタルアート作品を四半期ごとに紹介していくSelectionsシリーズの第3期目を公開。デジタルアート2作品と音楽4作品を以下に紹介します。

Digital Art


PARADOXICAL OBJECTS
主催:peer to space
キュレーター:Sue Bachmeier, Peggy Schoenegge

『PARADOXICAL OBJECTS』は、1968年から今日までのビデオ・スカルプチャー・アートを紹介するオンラインエキシビション。行動、個性、ステレオタイプ、多様性を問うNam June Paikの「Canopus」のような傑作マルチチャンネル映像作品から、デジタル時代の社会的行動やデバイス中毒を彫刻で表現した日本のデュオ、Exonemoの「The kiss」まで、全46点の作品が選ばれており、過去数十年間の映像彫刻の技術的発展とさまざまな創造的利用法を浮き彫りにしている。

このウェブベースの展示会では、異なる創造的プロセスと美学が展開されているが、作品は動画そのものとオブジェクトとしてのスクリーンを結びつけ、ビデオメディアの物理性を問うという共通のテーマで重なり合っている。

PARADOXICAL OBJECTSを体験する

ARCHIVIO CONTEMPORANEO
VR環境と全体のディレクション:JACKSON Kaki
主催:Visioni Parallele

『ARCHIVIO CONTEMPORANEO』はイタリアのアートコレクティブVisioni Paralleleが主催するプロジェクトで、そこへ提供されたのが日本のニューメディア・アーティスト、JACKSON Kakiによる見事なVR環境。彼はクリエイティブプラットフォームのSTYLYを用いて、音と映像による3Dオープンスペースを制作。この実験的なアートギャラリーにはJACKSON Kakiの他に、Ablaxas、Brando Corradini、Alex Valentina、Davide Busnelliなど10人以上のデジタルアーティストが参加している。

このオルタナティブな領域では、白と黒のフレームの建築物が自然の要素と衝突し、身体や肉を描いたデジタルペインティングが吊り下げられ、有機的な3D彫刻が浮遊している。この展覧は、プロジェクトのフィロソフィーのひとつである、リアルとヴァーチャルの融合を問う内容となる。

ARCHIVIO CONTEMPORANEOを体験する
* ウェブブラウザ、VRデバイス、スパートフォンに対応

Music

NTsKi
Orca

Orange Milk / EM Records

UK、東京を経由して現在は京都を拠点に活動する新進気鋭のミュージシャン、NTsKiのデビューアルバム。収録曲はどれも彼女の歌がフィーチャーされており、優しくささやくような歌声とどこか切ないメロディが聴き手の心に余韻を残す。しかしこのアルバムにはそうした歌の魅力だけでなく、曲によって少しずつ異なるスタイルと、音色の豊かさが示されている。"Kung-Fu"、"H S K"、"Plate Song"は共通して、浮遊感のある心地良い音のテクスチャーとノスタルジックなボーカルが融合したアンビエントポップな仕上がり。"Plate Song"と"1992"はどこか80年代のポップスを思い起こすレトロな雰囲気がある。ギターとベースが特徴的な"Labyrinth of Summer (Album Version)"はレゲエやロック要素のある甘美な曲だ。共に個性際立つレーベル、USのOrange Milkと日本のEM Recordsのダブルネームによるリリース。

Wata Igarashi
WIP06

WIP

プロデューサーのWata Igarashiが主宰するレーベル、WIPでは、エレクトロニックミュージックに対する多様なアプローチを真に示した彼の作品の進化を辿ることができる。この6番目のEPは、彼のルーツに回帰しているようだ。ドライブ感のあるトリッピーなテクノで、吸い込まれるような感覚を覚える。ある意味とても辛辣で、同時に親しみやすく、聴く者を包み込む。インダストリアルであり、トライバルでもある。

Foodman
Yasuragi Land

Hyperdub

現在兵庫県で個展『やすらぎランドの世界観』を開催中の創意溢れるアーティスト、Foodmanこと食品まつりが、UKの名門Hyperdubから7月にリリースした8作目のアルバム『Yasuragi Land』。コミカルで遊び心溢れる音と展開、抜ける気持ちよさを追求したような音色、独特の間、意図的な無秩序、異質なテクスチャーの組み合わせ、リズムの実験、即興性とグルーヴ感、さっぱりした終わり方...と、聴きどころ満載な深い味わいのある粋な一枚。デュオKisekiを一緒に組むBo NingenのTaigen KawabeとCotto Centerがボーカルで参加した曲も収録されている。

Yumi Iwaki
Juniper

Muzan Editions

大阪拠点のカセットレーベルMuzan Editions(夢山)からリリースされた、サウンドアーティストYumi Iwakiのアルバム。90年代よりCM音楽制作を中心とした作曲家、そして作詞家としても活動する彼女は、近年モジュラーシンセを使用した曲作りに夢中なようで、いくつかのアンビエント作品をリリースしている。2020年に同レーベルからリリースしたRyan J Raffaとのジョイントとアルバムに続く本作『Juniper』では、さまざまな音のレイヤーとその重なり合いを楽しむことができる。"Mosaic"はどこか懐かしさを感じる美しいピアノの旋律、街中のノイズ、挑戦的なシンセ音が絡みあい、次元をタイムスリップしているような不思議な感覚を覚えるし、"Juniper"はジャジーなピアノと弦、ヴォーカル、分厚いシンセのレイヤーで構成された豊かでエレガントな曲だ。


過去記事:
Q2
Q1

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